日本伝統の軸組みでは、角材に四角い穴を掘るという作業はとても多い。
柱が土台や梁に接合する部分には一寸×三寸の穴が必要だ。
これが非常に時間の掛かる大変な作業であることは、たたきのみだけで穴を掘った経験がある人には想像がつく。
電気ドリルでまず穴を開けてからのみで穴の形を整えるのであれば、木材の繊維がドリルの刃によって切断されているので、作業はかなり楽になる。繊維を切るという作業をのみだけでやろうとすると力が要るからだ。
その電気ドリルの刃を四角いのみの刃で囲って、強い圧力を掛けて木材に押し当てると、四角い穴が開く。これが角のみである。
多くの場合は一寸×一寸の刃が付いていて、最少3回の上下運動でほぞ穴が開く。
これで穴あけ作業が格段に早く進むのだ。
定価で10万円を超える道具なのだが、手刻みではなくてはならない。
写真の角のみは角材をチャックで強く挟み込んで使用する。
では、太鼓落としの梁や丸太の場合はどうなるかというと、専用の角のみが存在する。
チェーンで丸太を抱き込み、上下の微調整機構を使ってセットする。
私は丸太に穴を開ける作業を角のみでやった経験はない。
丸太にドリルで穴を空けて首の長いのみで四角くするのだが、穴の垂直を木口に固定した定規と穴に挿した差し矩で確認しながらの作業は大変時間が掛かる。
この道具の開発は電動工具の中でもかなり早い時期だったと聞いている。
古い角のみと現在の角のみを比べても、基本的な形に変化はない。
そしてこれからも変化はないだろう。
(菅沼建築設計・菅沼)